宅建士の平均年収と収入アップのコツ!年収1000万円を実現するには?
宅建士(宅地建物取引士)は国家資格を保有している職種であり、平均年収が高い傾向にあります。しかし、宅建士とひとくくりにしても、その年収は勤務先の企業規模や職種、実力などによって大きく異なります。
この記事では、データを基にした宅建士のリアルな平均年収と、年収アップのコツ、宅建士資格の取得方法について徹底解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
宅建士の平均年収は?
令和6年の賃金構造基本統計調査によると、宅建士の資格保有者が多い不動産取引業(企業規模10人以上)の平均年収は、500万円~600万円です。
国税庁の民間給与実態統計調査では、全産業の平均給与が478万円のため、これと比較すると不動産業界の平均年収は高いといえます。
| 企業規模計(10人以上) | ||
| 区分 | きまって支給する現金給与額(千円) | 年間賞与その他特別給与額(千円) |
| ~19歳 | 232.5 | 91.0 |
| 20~24歳 | 292.6 | 393.8 |
| 25~29歳 | 350.9 | 1133.9 |
| 30~34歳 | 406.4 | 1390.8 |
| 35~39歳 | 465.3 | 1736.1 |
| 40~44歳 | 480.5 | 2054.1 |
| 45~49歳 | 482.4 | 1657.1 |
| 50~54歳 | 470.8 | 1766.1 |
| 55~59歳 | 549.3 | 2282.5 |
| 60~64歳 | 423.0 | 1315.0 |
| 65~69歳 | 321.2 | 857.3 |
| 70歳~ | 352.6 | 408.9 |
| 全体平均 | 402.5 | 1,265.6 |
出典元(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)
大卒の1~2年目の平均年収
不動産取引業で新卒として働き始めた場合、年収はどの程度になるのでしょうか。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に基づき、大卒1~2年目が多く含まれる20~24歳(平均勤続年数1.2年)の収入を分析した結果、平均年収は約390万円〜450万円となります。
年収の幅は年間賞与(ボーナス)の変動によって生まれますが、同年代の全産業平均は平均月収が約27万円なのに対して、不動産業の平均月収は約29.7万円なので、年間賞与を抜きにしても水準が高いことがわかります。
| 企業規模計(10人以上) | ||||
| 区分 | 年齢 | 勤続年数 | きまって支給する現金給与額(千円) | 年間賞与その他特別支給額(千円) |
| 男女計
大学 |
20~24歳 | 1~2 | 297.1 | 378.5 |
出典元(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)
男女別の平均年収
宅建士の資格保有者が多い不動産業界における平均年収は、男女別の場合はどのくらい異なるのでしょうか?
男性は平均月収が約47.1万円、年間賞与を含む平均年収が約743万円なのに対して、女性は平均月収が約33.5万円、年間賞与を含む平均年収が約492万円となっており、性別間の年収の差が大きいのが特徴です。
この年収差は、男性が管理職や高インセンティブの営業職に就く割合が高いことや、女性が事務職や時短勤務などの非正規雇用に就く割合が高いことなどが影響していると考えられます。
| 企業規模計(10人以上) | ||
| 区分 | きまって支給する現金給与額(千円) | 年間賞与その他特別給与額(千円) |
| 男性 | 471.0 | 1776.6 |
| 女性 | 335.3 | 899.6 |
出典元(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)
女性の宅建士も増えつつある
令和6年の賃金構造基本統計調査によると、全産業の女性の平均月収が約27.5万円であるのに対し、不動産業界の女性の平均月収は約33.5万円と、月々約6万円も高くなっています。
このように、他の業界と比較して安定した高い収入を得やすいだけでなく、多様な働き方に対応した求人が多いことから、宅建士を目指す女性は増加傾向にあります。
さらに、宅建士の高い需要と資格の永続性により、結婚や出産などのライフイベントで一度離職した場合でも、自分の理想に合った再就職先を見つけやすいことも、この業界で女性が活躍する可能性を秘めている理由の一つです。
宅建士の資格取得が年収アップにつながる理由
ここからは、宅建士の資格取得が年収アップにつながる理由についてご紹介します。
毎月の給与に資格手当が加算される
不動産業界では、宅建士の取得に対し、資格手当を用意している企業が多くあります。
これは、不動産売買を行う企業が、原則として事務所ごとに、業務に従事する者の5分の1以上の割合で専任の宅建士を配置することが義務付けられているためです。
また、宅建士の独占業務である
・重要事項の説明
・重要事項説明書(35条書面)への記名・押印
・契約書(37条書面)への記名・押印
は不動産売買において欠かせないため、人材確保のために、宅建士を含めた資格手当を用意しているという理由もあります。
資格取得前から支援を受けられるパターンと、合格後に手当が支給されるパターンが存在します。資格手当を活用して宅建士に挑戦したい方は、事前にその制度や支給条件について詳しく確認しておきましょう。
宅建士の資格手当の相場
宅建士の資格手当の相場は月額1~3万円程度です。企業によっては月額5万円を支給するケースもあるようです。
この資格手当だけでも、年間で12~36万円の大きな年収アップが見込めます。
ただし、月額5万円以上の高額な手当がある企業では、その分基本給や他の手当が低めに設定されている場合もあるため、入社前に給与全体をしっかり把握しておくことが重要です。
成果報酬やインセンティブにつながる
不動産の売買において、宅建士による契約書への記名・押印は、取引を法的に成功させるために必要不可欠です。さらに、資格を持つ専門家として顧客からの信頼を得やすいため、結果として契約をスムーズに成立させられるというメリットもあります。
特に、営業職は契約数や売上による歩合制(インセンティブ)が多く、成約率の向上が自身の給与アップに直結します。宅建士の資格を保有していることで、こういった成果報酬や歩合(インセンティブ)を得やすいことも、年収が上がる理由の一つです。
昇進・転職・独立による高収入を実現しやすくなる
宅建士の資格は不動産業界以外でも活躍します。例えば、銀行などの金融業界では、融資の担保となる不動産の評価に宅建士の知識が必要とされます。また、建築業界をはじめとする不動産取引に関連する業界でも、その専門性が評価され、資格が求められています。
また、宅建士に限りませんが、昇進や転職、独立などをすることでより高収入を得ることも可能です。宅建士の専門知識と実務経験を活かし、実績を重ねて実力を身に付けることが、高収入を目指すカギとなります。
宅建士のキャリアパスは?年収1000万は目指せる?
ここまで、宅建士は比較的平均年収が高く、さらなる高収入も目指せることをご説明しました。では、年収1000万円を目指すことは可能なのでしょうか?
実際に、年収が1000万円を超える宅建士は存在します。実績と実力があれば、年収1000万円を目指すことは十分に可能です。
この章では、宅建士として年収1000万円を目指すための方法について、紹介していきます。
営業職で契約数を増やす
まずは、営業職で契約数を増やす方法です。先述の通り、不動産業界の営業職は歩合制(インセンティブ)が多いため、契約数を増やせば年収1000万円までの道は格段に近くなります。
とはいえ、不動産は高額な取引であり、顧客の意思決定にも時間を要するため、契約を簡単に獲得できるわけではありません。そのため、より深い専門知識と、顧客を納得させる巧みな交渉術が求められます。
営業職として年収1000万円を目指すには、精力的に営業活動を行うことに加え、高い成約率の維持を常に意識することが重要です。
大手企業の管理職に就く
宅建士が年収1,000万円を目指す方法として、大手企業の管理職を目指すというキャリアパスもあります。
直近の賃金構造基本統計調査(令和6年)でも、大企業の事業所の方が、中企業の事業所と比較して年収が高い傾向にあることが示されています。
特に、定年までの年間賞与額に大きな差があるのも特徴です。管理職のポジションに限らず、大手企業の方がより高収入を目指しやすいのは確かでしょう。
| 企業規模 | 1,000人以上 | 100~999人 | ||
| 区分 | きまって支給する現金給与額(千円) | 年間賞与その他特別給与額(千円) | きまって支給する現金給与額(千円) | 年間賞与その他特別給与額(千円) |
| ~19歳 | 204.9 | 460.4 | 222.5 | 49.8 |
| 20~24歳 | 306.2 | 520.1 | 288.6 | 316.0 |
| 25~29歳 | 373.9 | 1658.5 | 360.5 | 1059.8 |
| 30~34歳 | 437.0 | 2359.0 | 402.6 | 1142.5 |
| 35~39歳 | 470.7 | 2943.0 | 481.7 | 1447.4 |
| 40~44歳 | 496.4 | 3087.6 | 507.6 | 2248.4 |
| 45~49歳 | 505.8 | 2702.7 | 540.5 | 1775.0 |
| 50~54歳 | 499.6 | 2585.4 | 486.4 | 1788.7 |
| 55~59歳 | 584.2 | 3465.8 | 581.8 | 1982.5 |
| 60~64歳 | 488.1 | 1656.9 | 393.5 | 1524.6 |
| 65~69歳 | 313.4 | 1037.7 | 366.2 | 624.6 |
| 70歳~ | 272.0 | 859.5 | 306.2 | 158.3 |
出典元(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」)
独立して開業する
年収1,000万円を目指すキャリアパスとして、宅建士として独立開業するという方法もあります。成功すれば、会社に所属している場合よりもはるかに大きな利益を得ることが可能です。
しかし、独立して個人で会社を経営するには、様々なリスクも伴います。例えば、開業するための初期費用や毎月の経費、人件費など、出ていくお金も多いことが理由の一つです。特に、開業直後は赤字となるリスクもあります。
独立には、営業スキルだけでなく、経営のノウハウや強固な人脈、鋭い情報収集のためのアンテナなど、個人事業主として求められる広範なスキルが必要です。まずは、開業にあたって資金調達や経営の学習など、必要な準備を計画的に進めることから始めましょう。
宅建士試験の難易度と合格までの流れ
ここからは、宅建士試験の難易度と合格までの流れについてご紹介します。
宅建士として高収入を目指すために、宅建士試験に挑む準備を始めましょう。
宅建士試験の合格率・難易度
宅建士試験の合格率は、毎年15~18%程度を推移しています。
令和6年の試験では、申込者数が301,336人、受験者数が241,436人、合格者数が44,992人、そして合格率が18.6%となっています。宅建士は決して簡単ではなく、難易度は高いといえます。
そのため、十分な学習期間を設け、しっかりと知識を身に付けて挑むことが重要です。
宅建士試験の合格に必要な学習時間
宅建士試験は、一般的に400~600時間の学習が必要と言われています。専門スクールに通う場合で300~400時間、独学の場合で400~600時間が目安になります。
宅建士試験は「宅建業法」「権利関係(民法等)」「法令上の制限」「税・その他」の4科目あり、出題範囲が広いのが特徴です。全50問で構成されており、合格ラインは毎年35点から38点程度となります。
得点源となる宅建業法と民法等を中心に学習を進めながら、幅広い問題をカバーできるよう、テキストの精読や問題集の反復練習を行いましょう。
宅建士証交付までの流れ
宅建士試験に合格後、宅建士証が交付されて初めて宅建士になることができます。
その具体的な流れは以下の通りです。
| ①宅地建物取引士試験合格発表 | 合格発表は毎年12月、インターネットにて確認できます。 |
| ②実務講習 | 試験合格後、実務講習を受講する必要があります。
1ヶ月の通信講座と2日間のスクーリングに通い、修了試験に合格したら終了です。 ※実務経験が2年以上ある場合は免除 |
| ③宅地建物取引士の登録 | 実務講習の修了証を受け取った後は、宅建士として働くために必要な宅地建物取引士の登録申請を行います。
※試験合格から1年以内に登録しなかった場合、法定講習を受ける必要があります。 |
| ④宅地建物取引士証交付 | 宅地建物取引士の登録申請後、宅地建物取引士証が交付されます。 |
まとめ
宅建士の資格は、不動産取引の成約に不可欠な独占業務を担うため、企業にとって必須の存在です。そのため、平均年収は500万円から600万円と高水準になる傾向があります。
さらに、資格によって得た専門知識と実務経験は、大手企業の管理職や独立開業といった年収1,000万円を目指すキャリアパスを開くための強固な基盤となり、さらなる高収入の実現に繋がります。
宅建士試験の合格を目指す方は、まずはしっかりと学習計画を立てて挑戦しましょう。