キャリアコンサルタント試験とは?概要や合格するための対策を紹介
総務省統計局のデータによると、2019年の転職者数は351万人と過去最高となり、終身雇用神話はかなり以前から崩壊しています。
また、「ライフワークバランス」や「働き方改革」といった言葉が社会に浸透し、日本人の働き方に対する考え方の変化も急速に進んでいます。さらに、仕事や人間関係に悩み、休職する方や精神的に病んでしまう方もたくさんいます。
そうした働く方やこれから働こうとする方のキャリアに関する相談を引き受けるのが、国家資格「キャリアコンサルタント」です。現在、キャリアコンサルタントの需要は高まっており、活躍の場が広がっています。
キャリコンサルタントになるためには、「キャリアコンサルタント試験」に合格しなければなりません。それでは、どんな試験内容なのか、試験対策はどうしたらいいのか、ご紹介します。*¹
目次
キャリアコンサルタント試験とは?
キャリアコンサルタント試験とは、「特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(以下「JCDA」)」および「特定非営利活動法人 キャリアコンサルティング協議会(以下「CCC」)が共同で実施する国家資格試験です。
この試験(「学科」と「実技」の両方)に合格した方のみが国家資格である「キャリアコンサルタント」を名乗ることができます。
それでは、この試験について詳しく見ていきます。以下の試験に関する情報は、JCDAが運営する公式サイト(https://www.jcda-careerex.org/)およびCCCが運営する公式サイト(https://www.career-shiken.org/)を参照しました。
難易度・合格率
JCDAの公式サイトによると、直近3回の試験の合格率については、以下のようになっています(CCCによる合格率もほとんど同じです)。
・第24回(2023年11月) 学科:51.6% 実技:64.5% 学科実技同時:45.8%
・第23回(2023年7月) 学科:81.2% 実技:62.5% 学科実技同時:59.8%
・第22回(2023年3月) 学科:82.3% 実技:63.0% 学科実技同時:59.3%
「実技」の合格率は安定していますが、「学科」は回によるばらつきが大きくなっています。
なお、後述しますが、この試験を受けるには受験資格が必要とされ、ある程度のキャリアコンサルティングに関する知識や経験をお持ちの方が受験することを考えると、簡単に合格できる試験とはいえません。
試験概要
① 受験資格
受験には次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した方
- 労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する方
- 技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した方
② 試験日程・試験会場
試験は1年に3回行われます。「学科」と実技「論述」は同じ日に実施されます。実技「面接」はJCDAとCCCとで日程が異なるので、各公式サイトでご確認ください。
また、試験会場もJCDAとCCCとで違いがあるので、こちらも公式サイトでご確認ください。
③ 受験の申し込み
JCDAは「Web申請」または「Web+郵送申請」、CCCは「Web申請」または「郵送申請」となります。どの方法で申し込む場合でも、「顔写真」と「受験資格証明書」が必要です。
④ 受験料
国家資格のため受験料は消費税非課税(JCDAの公式サイトの「税込」表記は間違い)で、以下のようになっています。
学科:8,900円 実技:29,900円
試験内容
試験は大きく分けて「学科」と「実技」があります。「実技」はさらに「論述」と「面接」とに分かれます。
① 「学科」
出題形式は、四肢択一のマークシート方式です。50問出題され、試験時間は、100分です。合格基準は、100点満点で70点以上です。
② 「実技」
出題形式は、「論述」が記述式で「面接」が「ロールプレイ」と「口頭試問」です。試験時間は、「論述」が50分で「面接」が20分です。合格基準は、150点満点で90点以上です。
ただし、「論述」は配点の40%以上の得点、かつ「面接」は評価区分の全てで40%以上の得点が必要です。
なお、「学科」はJCDAとCCCとで同じ問題が出題されますが、「実技」は問題が異なり、「面接」の評価区分も異なっています。試験科目の詳細は、公式サイトでご確認ください。
キャリアコンサルタント試験の対策は?
キャリアコンサルティング試験は、「学科」も「実技」も出題範囲が広く独学では厳しそうに感じます。特に、「面接」対策はどうしたらいいのか悩ましいところです。
しかし、この試験については、楽天市場で検索すると、多くのテキストがヒットします。
国家資格なのにテキストは主催団体が公表している過去問だけという場合もあることを考えると、独学でも勉強しやすい試験です。実際に独学で合格した方のブログは多いです。さらに、Webサイトや動画を使って無料で学習することもできます。
また、スクールや通信講座の選択肢も多く、優れた教材・講師とカリキュラムで「面接」対策までできます。
ここでは、主に独学を前提に試験対策をご紹介します。
過去問を何度も解く
「学科」では、特に過去問対策が重要になってきます。「実技」も過去問を使った練習は欠かせませんが、ここでは「学科」についてご説明します。
JCDAとCCCの公式サイトでは、直近3回分の過去問(「学科」と「論述」で、「学科」のみ解答あり解説なし)が掲載されています
(https://www.jcda-careerex.org/past.html、https://www.career-shiken.org/about/learninfo/)
これら過去問の解説については、「キャリアコンサルタント学科試験対策研究室(多田塾)」のサイト(https://e-4clover.com/gakka/)に詳しく載っています。
「学科」では初見の問題も多く出ますが、過去問を解くことで出題の形式や傾向をつかみ、解説を読むことで関連知識を増やしていくことができます。また、間違えた箇所はテキストを読んで理解を深め、次に解いたときに同じ間違いをしないようにします。
なお、先述した「多田塾」のサイトには、「学科」対策の「超重要テキスト」や「問題集100問」というページもあり、全て無料で利用できるのでおすすめです。
問題文の内容を読み解く練習をする
この試験に限った話ではないですが、「学科」も「実技」も問題文すなわち出題者の意図を読み解かなければ正解にたどり着けません。
「学科」試験は、4つの選択肢の中から「適切なもの」または「不適切なもの」を1つ選択する形式です。テキストや過去問の解説でインプットした知識を総動員して、問題文の内容を読み解く練習をします。
このトレーニングを重ねておけば、初見の問題でも4択を2択にまでは絞れるようになります。
なお、「学科」の理論対策をするうえで、多くの方が参考にしている専門書として「6訂版 キャリアコンサルティング 理論と実際」が有名です。この本の内容を元にした出題も多いです。
過去問と突き合わせて、頻出項目・重要項目を自分なりにノートにまとめるなど、知識を定着させていきましょう。試験合格後もずっと使える本なので買っておいて損はありません。
論述試験は回答することに慣れるのが大事!
「論述」は、JCDAとCCCとで出題形式が異なりますが、内容に大きな違いはありません。
どちらの団体も設問は毎回同じなので、過去問を一通り解いて自分なりのパターンを身に付けておいて、本試験ではそれに沿って解答すれば高得点を取れます。
解答形式に慣れるだけなので「学科」よりも対策はしやすいです。
① JCDAの出題形式
「逐語記録」を読んで設問に解答します。相談者とキャリアコンサルタントとのやりとりの事例(後半は2パターンに分岐)が示されます。
問1:2パターンのキャリアコンサルタントの対応の違い(5つのキーワードが指定される)
問2:キャリアコンサルタントの対応が相応しいか否か
問3:相談者の問題点
問4:今後どう支援するか
② CCCの出題形式
「事例記録」を読んで設問に解答します。相談者とキャリアコンサルタントとのやりとりの事例が示されます。
問1:相談内容
問2:キャリアコンサルタントの応答の意図
問3:相談者の問題点
問4:今後どう支援するか
なお、先述の「多田塾」のサイトでは、「論述」対策について非常に丁寧に解説しています(https://e-4clover.com/cc-ronjyututaisaku/)。
面接対策はロールプレイを何度もする
「面接」は、JCDAとCCCとで大きな違いはありません。受験者がキャリアコンサルタントとなり、相談者とやり取りする形式です。
評価基準は両団体で異なり、JCDAは「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」で、CCCは「態度」「展開」「自己評価」です。この違いは特に意識する必要はなく、相談者に寄り添い成長を促すような応答ができれば、高得点を狙えます。
まず、「ロールプレイ」の対策としては、とにかく場数を踏むことです。スクールを使っている方は、カリキュラムに組み込まれているので、講師のアドバイスを受けながら改善していくことができます。独学の方は、受験仲間を作って、対面やリモートで練習することをおすすめします。
次に「口頭試問」ですが、いくつか定番とされる質問があります。例えば、「来談目的」「主訴」「相談者の問題点」「自分の良かった点・悪かった点」「どのように展開したか」「今後の支援」「合格後は資格をどう活かすか」等です。
ネットの声を拾うと、近年ではこれら以外に答えにくい質問、抽象的な質問、予想外の方向からの質問等も増えてきているとのことです。あらかじめ想定問答集を作っておいて、定番の質問はスラスラと答えられるようにして、変化球の質問が来ても落ち着いて答えられるようにしておきましょう。
受験資格も取れるオンライン【キャリアコンサルタント養成講習】がおすすめ!
独学で不安な方やどのスクールを選んだらいいのかわからない方には、「一般社団法人 地域連携プラットフォーム(TRP)」による「キャリアコンサルタント養成講習(https://careerjp.work/cc1/)」をおすすめします。
授業は完全オンラインとなっており、「学科」はもちろん「論述」や「ロールプレイ」の対策も万全です。知識ゼロの方でも一流の講師による丁寧な指導により、3カ月で基礎からしっかり学べるカリキュラムになっています(1.5カ月の「最速コース」もあります」)。
しかも、厚生労働大臣が認定するキャリアコンサルタント講習に該当するため、修了すればキャリアコンサルタント試験の受験資格を得ることができます。さらに、資格取得後も就職等の手厚い支援を受けられます。
講座説明会や質問受付会も開催しているので、お気軽にご参加してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は国家資格「キャリアコンサルタント試験」についてご紹介しました。
・現在、キャリアコンサルタントに対する社会的な需要が高まっている。
・キャリアコンサルタント試験は2つの団体が主催しており、合格率を見ると簡単な試験とはいえない。
・試験を受けるには、厚生労働大臣が認定する講習を修了する等の受験資格が必要である。
・試験は大きく分けて「学科」と「実技」があり、「実技」はさらに「論述」と「面接」に分かれ、「面接」はさらに「ロールプレイ」と「口頭試問」とに分かれる。
・「学科」対策は、過去問を解いて出題傾向をつかみ、解説やテキストを読んで理解を深めることが重要である。
・「論述」対策は、設問内容が毎回同じなので、解答パターンを身に付けることが重要である。
・「ロールプレイ」対策は、とにかく場数を踏むことが重要である。
・「口頭試問」対策は、定番の質問にはスラスラと答えられるように練習しておくことが重要である。
・TRPの「キャリアコンサルタント養成講座」等のスクールを使えば、より効率的に学ぶことができ、さらに受験資格を得ることもできる。
キャリアコンサルタントは、他の方のキャリ形成すなわち人生に大きくかかわる非常に重要な職業です。それだけにやりがいのある仕事なので、人の役に立ちたい方や人とコミュニケーションを取ることが好きな方は、目指してみてはいかがでしょうか。
【参考データ】
*¹「総務省統計局 統計トピックスNo.123 増加傾向が続く転職者の状況 ~2019年の転職者数は過去最多~」(https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/topi1230.html)