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公開:2023.11.25 公開:2023.11.25

企業看護師の求人はどんなもの?仕事内容や年収、メリット・デメリットを解説

企業看護師の求人はどんなもの?仕事内容や年収、メリット・デメリットを解説 NEW

企業看護師とは、医療機関ではなく一般企業や製薬会社、医療機器メーカー、治験関連企業などで働く看護師のことです。企業看護師は医療機関の看護師とは働き方が違うため、安易に転職すると「イメージと違った」ということになりかねません。
この記事では、企業看護師が気になっている方に向けて、企業看護師の仕事内容や勤務先、平均年収、メリット・デメリット、求人の見つけ方などについて解説します。求人情報に目を通す前に、企業看護師について理解を深めましょう。

企業看護師の求人にはどんなものがある?

医療機関で診察や治療の補助を行う以外にも、看護師としての資格や経験を活かせる仕事はいろいろあります。中でも転職先として人気が高いのは、一般企業の「産業看護師・産業保健師」です。
また製薬会社で働く「臨床開発モニター(CRA)」、医療機関の治験事務局で働く「治験コーディネーター(CRC)」、医療機器メーカーで働く「クリニカルスペシャリスト」なども選択肢として挙げられます。

産業看護師・産業保健師  

産業看護師・産業保健師は、企業内の医務室や保健室、健康管理室などで働く看護師のことです。病気や怪我をした従業員のケアはもちろん、健康診断データの整理やメンタルヘルス対策、休職者の復職支援なども行います。

産業看護師と産業保健師の仕事内容はほぼ同じであるため、両者は混同されがちです。しかし産業看護師と産業保健師は保有資格が違います。産業看護師には看護師免許を保有していればなれますが、産業保健師になるには看護師免許に加えて保健師免許の保有も必要になります。
産業看護師には保健師免許がなくてもなれますが、保健師免許を持っているほうが採用の際に有利になることが多いため、ダブルライセンスを目指す人も少なくありません。

臨床開発モニター(CRA)

臨床開発モニター(Clinical Research Associate)とは、新薬に関する治験をサポートしたり、治験が実施計画に基づいて正しく行われているかをモニタリングしたりする仕事のことです。製薬会社や製薬会社から開発業務を受託するCRO(Contract Research Organization)に勤務します。
臨床開発モニターには、フットワークの軽さが求められます。治験を実施する医療機関などに出向くことが多いからです。

また治験の中には「グローバル試験」と呼ばれる複数国で同じ治験を進めるものもあり、グローバル試験を担当する場合には英語の報告書を書いたり、英語で電話会議を行ったりする必要が出てきます。そのため英語力があると、転職の際にアピールポイントとなります。

治験コーディネーター(CRC)

治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator)は、製薬会社と治験被験者の間に立ち、治験がスムーズに進むようサポートする仕事です。勤務先は病院や治験コーディネーターの派遣会社であるSMO(Site Management Organization)です。

治験コーディネーターは、被験者に対して説明会を開催したり服薬指導を行ったりするのはもちろん、治験担当医や検査部など治験に関わるチーム内の調整役も担います。そのためコミュニケーション能力が高いことや、社会人としての基本的なマナーを身につけていることが求められます。

クリニカルスペシャリスト

クリニカルスペシャリストは、医療機器メーカーに勤務して営業をサポートする仕事です。医療従事者に対して、自社製品のプレゼンテーションや医療機器のデモンストレーション、納品後のアフターフォローなどを行います。
企業によってはフィールドナースと呼ばれることもありますが、看護師だけでなく臨床工学技師や理学療法士の資格保有者も求人対象となることが多い仕事です。

クリニカルスペシャリストには、自社製品の情報を医療従事者へ正確に伝えることが求められます。そのためプレゼンテーション能力やコミュニケーション能力の高い人が向いているといわれます。

企業看護師の平均年収は?

看護師ワーカーの調査により、2023年11月現在における看護師の施設形態別平均年収が以下の通りであると分かりました。

全体 病院 クリニック 訪問看護 介護関連施設 企業 その他
413万円 437万円 409万円 423万円 394万円 415万円 369万円

企業看護師の平均年収は415万円となっており、看護師全体の平均年収413万円と同水準です。病院の437万円と比べるとやや低くなっていますが、病院勤務の場合は夜勤や残業が発生することも多いため、それらがほぼ発生しない企業看護師の年収は順当なものであると考えられるでしょう。
ただし上記はあくまで年収の平均値であり、例えば臨床開発モニターの中には年収800万円以上を得ている人もいます。同じ企業看護師でも勤務先や仕事内容によって、収入にばらつきがあることは理解しておきましょう。

企業看護師のメリットは?

企業看護師になると、規則正しい勤務形態で働くことができるようになったり、体力的・精神的負担を感じにくくなったりします。また大企業で働く場合は福利厚生が充実していることも少なくありません。

ワーク・ライフ・バランスが整う

ワーク・ライフ・バランスが整うことは、企業看護師になると得られる大きなメリットの一つです。
医療機関と異なり、一般企業では日中の定時勤務、土日祝日休みが基本です。規則正しい勤務形態で働けるため、昼夜逆転による体調不良の心配がなくなるのはもちろん、趣味の時間を充実させたり、家族や友達と時間を合わせやすくなったりもするでしょう。

福利厚生の充実した職場が多い

福利厚生の充実した職場が多いというのも、企業看護師になるメリットとして挙げられます。企業看護師の求人を出している企業は、大手企業やその系列企業、外資系企業などが中心となっており、そうした企業の福利厚生は充実していることが多くなります。
企業看護師の平均年収は看護師全体のそれとほとんど変わりませんが、同じ給料でも福利厚生が充実している分、職場に対する満足感は企業看護師の方が得やすいかもしれません。

体力的負担が少ない

座り仕事が多く体力的負担が少ないのは、企業看護師の大きな特徴です。企業看護師の仕事は、パソコンを使ったデータ管理やプレゼンテーション資料の作成、医療従事者や治験患者との面談など座り仕事が多くなります。
一方医療機関における看護師の仕事は、基本的に立ち仕事で、患者さんの移動介助やベッド移動など体力のいるものもたくさんあります。
年齢を重ねて立ち仕事や体力仕事が辛くなってきた看護師の転職先としても、企業看護師はおすすめです。

医療行為が少ない

企業看護師のメリットとして、医療行為による精神的負担が少ないということも挙げられます。
企業看護師になると、直接医療行為に関わる機会は少なくなります。患者さんと関わる機会が多い一般企業の産業看護師・産業保健師であっても、重篤な症状の患者さんを相手にすることはごくまれであるため、医療ミスや命を預かることに対するプレッシャーは少ないでしょう。
命を預かる医療現場特有の緊張感にストレスを抱える看護師にとっては、医療行為が少ないことは大きなメリットといえるはずです。

企業看護師のデメリットは? 

企業看護師にはさまざまなメリットがありますが、一方で医療機関とは仕事内容が大きく異なるため、それまでに培ってきたスキルが使えなかったり、低下したりする懸念があります。
また企業看護師の求人は少なく、誰でも簡単に転職できるわけではないということも理解しておく必要があります。

医療処置のスキルが低下しやすい

医療処置のスキルが低下しやすいというのは、企業看護師になるデメリットの一つとして挙げられます。企業看護師の仕事は健康診断やカウンセリング、データ管理などがメインであり、医療処置のスキルが発揮される機会はあまりないからです。特に将来医療現場に戻りたいと考えている人の場合、復帰後に必要なスキルを取り戻す努力が必要になるかもしれないということは理解しておきましょう。

今までとは違うスキルが求められる

企業看護師になると、医療現場ではほとんど必要とされなかったパソコン操作の技術やプレゼンテーション能力、ビジネスマナーなどが求められるようになります。
企業看護師に転職したもののスキル不足から思うように活躍できず、早々に諦めてしまうという状況にならないように、自分が希望する職種においてどんなスキルがどの程度必要か、事前に確認しておくことが大切です。

求人が少なく倍率が高い 

企業看護師への転職は、難易度が非常に高くなっています。例えば産業看護師や産業保健師については、雇用先が医務室や健康管理室を持つ大企業に限られ、雇用人数も一般的に1〜3人程度と少ないため、求人自体があまりありません。

その一方でさまざまなメリットがある企業看護師を目指す人は多く、求人が出ると多くの応募者が殺到するという現状があります。
このように企業看護師には、求人が少なく倍率が高くなりがちというデメリットがあります。そのため転職を成功させるには、効率良く求人を探すことと、万全の採用対策をした上で試験に臨むことが必要です。

企業看護師の求人の見つけ方は?

企業看護師の求人を効率良く見つけたいなら、看護師専門転職サイトを利用するのがおすすめです。
看護師専門転職サイトに登録すると、求人が出されたタイミングですぐに内容を紹介してもらえるようになります。応募の機会を逃す心配がなくなるのは、求人数が少ない企業看護師への転職を成功させる上で、大きなメリットとなるでしょう。
また看護師専門転職サイトでは、転職活動についてコンサルタントからアドバイスも受けられます。採用対策を万全にして合格率を高められるのも大きな魅力です。

企業看護師に転職する際におすすめな資格は?

企業看護師になるために必須の資格は看護師免許のみです。しかし他の資格を併せて取得しておけば、採用の可能性を高められます。企業看護師は求人数が少なく、倍率が高くなりがちなので、資格を取得してライバルに差をつけるのもおすすめです。

保健師免許

保健師の主な仕事は、人々の健康維持や病気の予防をサポートすることです。保健師と名乗って仕事をするためには、国家資格である保健師免許の取得が必要になります。
看護師が企業への転職を目指す場合、保健師免許を保有していると有利になるといわれます。企業看護師の仕事は予防医学がメインであるため、保健師免許の保有者を優先的に採用する企業も多いからです。
看護師が保健師免許を取得するには、養成学校や大学で学んだ後、保健師国家試験に合格する必要があります。

衛生管理者

衛生管理者の仕事は、社員の健康や職場の衛生を管理し、労働環境を改善することです。常時50人以上が働く職場では一人以上の衛生管理者を置くことが法律で定められているため、多くの企業が求人を出しています。
衛生管理者の国家試験を受験するためには実務経験が必要ですが、看護師または准看護師として働いた経験はこの実務経験に含まれるため、比較的目指しやすいでしょう。

産業カウンセラー

産業カウンセラーは心理的な手法を用いて、従業員に対しカウンセリングや研修を行う仕事です。近年、従業員のメンタルヘルス対策を重視する企業が増えてきているため、産業カウンセラー資格を保有していると企業看護師への転職が有利になるといわれます。
看護師が産業カウンセラー試験の受験資格を取得する方法はいくつかありますが、一般的なのは日本産業カウンセラー協会主催の養成講座を修了するという方法です。

メンタルヘルスマネジメント検定 

メンタルヘルスマネジメント検定とは、労働者の心の不調を未然防止するために、必要な知識や対処法を習得するための試験です。試験は大阪商工会議所と施工商工会議所が主催し、受験のために特別な資格は必要ありません。
メンタルヘルスマネジメント検定は公的資格であるため、合格するとメンタルヘルスケアの知識や技術があることの証明になります。企業看護師への転職活動を行う際にもアピールポイントとなるでしょう。

企業看護師に関するよくある質問は?

企業看護師への転職を目指す上で、多くの人が疑問に思うであろうポイントにお答えします。

企業看護師が多い年代はある?

企業看護師の平均年齢に関するデータはありません。しかし日本看護協会が会員15,052人を対象に行った「2021年看護職員実態調査」によると、看護師全体の平均年齢は41,3歳でした。
医療機関に勤務した後で企業看護師に転職する人が多いことを考えると、企業看護師の平均年齢は40歳以上であると予測できるでしょう。

企業看護師には新卒からなれる?

新卒の看護師を採用する企業はまれです。企業看護師として必要な基礎看護のスキルや、検査データを読み取る力は臨床で培われます。そのため臨床経験を積んだ上で目指した方がスムーズに仕事ができるでしょう。

企業看護師と産業看護師はどう違う?

企業看護師とは一般企業で働く看護師全般を指す言葉であり、その中でも一般企業の医務室や保健室、健康管理室などで働く看護師のことを産業看護師と呼びます。企業看護師という大枠の中にある一つの職種が、産業看護師だと考えてください。
ただし企業の中には、企業看護師と産業看護師を同一のものとして捉えているところも多くあります。応募の際には職種名だけでなく、仕事内容についてもしっかりと確認しましょう。

まとめ 

ワーク・ライフ・バランスの取りにくさや、体力的・精神的負担の大きさなどから、転職を考える看護師は少なくありません。
しかし「せっかく取った看護師免許を活かせないのはもったいない」「全く違う業種に転職してうまくいくだろうか」と二の足を踏んでしまう方もいらっしゃるはずです。そんな方は、看護師の資格や経験を活かせる企業看護師を目指してみてはいかがでしょうか。

ただし企業看護師には、医療機関の看護師とは異なるスキルが求められます。また転職の難易度も高いため、今回の記事を参考に、企業看護師について理解を深めた上で転職活動に臨みましょう。

 

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