宅地建物取引士（宅建士）試験は、不動産取引の専門家として高い知識と倫理観が求められる国家資格です。例年15%～18%前後で推移する合格率からもわかる通り、生半可な対策では合格は困難であり、計画的な学習が不可欠です。
一般的に合格に必要な総勉強時間は300〜600時間と幅があり、これは受験者の前提知識（法律や不動産の経験など）や選択する学習スタイル（独学・予備校・通信講座）によって大きく変動します。
この記事では、宅建試験の合格に必要な具体的な勉強時間の目安、学習スタイル別の比較、効果的な学習ロードマップ、そして多忙な社会人が働きながら合格を勝ち取るための効率的な学習戦略について、公的データに基づきながら詳しく解説します。

宅建の取得に必要な勉強時間は？

宅地建物取引士（宅建士）試験に合格するために必要な総勉強時間は、一般的に300〜600時間が目安とされています。

具体的には、スクール（予備校）や通信講座を利用する場合は300～400時間、独学で取得を目指す場合は600時間の勉強が必要です。

近年では、単なる暗記だけでは対応できない応用力を試す問題が増えており、過去に出題されたことのない問題や、近年では、過去に出題されたことのない問題や応用力を試す問題が増えています。そのため、単なる暗記に頼るのではなく、問題の本質を理解して挑むことが重要になります。

宅建の難易度は？

宅建試験の合格率は、例年15%〜18%程度で推移しており、国家資格の中でも難易度は高い水準にあります。

 

合格者が全体の2割に満たないため、不合格となる受験者が大半を占めます。この事実から、「不合格になったら恥ずかしい」といった懸念は不要であり、難しい試験であるからこそ、正しい戦略と十分な勉強時間を確保することが重要であると理解しましょう。

 

実施年	合格率
令和1年（R1）	17.0%
令和2年10月（R2.10）	17.6%
令和2年12月（R2.12）	13.1%
令和3年10月（R3.10）	17.9%
令和3年12月（R3.12）	15.6%
令和4年（R4）	17.0%
令和5年（R5）	17.2%
令和6年（R6）	18.6%

 

出典：出典： 一般財団法人 不動産適正取引推進機構（試験実施団体）「宅地建物取引士資格試験実施結果の概要」に基づき作成

（https://www.retio.or.jp/wp-content/uploads/2025/08/136-058.pdf など）

 

「宅建試験に落ちたら恥ずかしい」と思う方もいるかもしれませんが、不合格になる受験者は8割以上と、難易度が高い試験であることは確かなので、万が一の場合であっても次回に向けて継続して取り組むことが重要です。

独学とスクール・通信講座で勉強時間はどう変わる？

学習スタイルは、合格に必要な総勉強時間と費用に大きく影響します。

独学の場合

独学で宅建試験に挑む場合は、400～600時間の勉強時間が必要と言われています。

 

メリット 

教材費のみで済むため、費用を最低限抑えられます。

また自分のペースで学習を進めることができるため、時間に対して自分でコントロールすることが可能です。

 

デメリット 

教材選び、学習計画、法改正への対応、疑問点の解消を全て自分で行う必要があり、非効率な学習に陥りやすいといったリスクがあります。特に、自己管理能力とモチベーションの維持が重要です。

スクール（予備校）の場合

専門スクールに通って宅建試験の対策をする場合は、300～400時間が必要と言われています。

 

メリット

独学の場合に必要だった計画立案の時間が不要な分、効率的に学習を始められます。プロの講師に直接質問できるため、理解度が深まりやすく、モチベーションを維持しやすい点が最大の強みです。

 

デメリット

費用が高い傾向にあるため、自身の予算との相談が重要です。

通信講座の場合

通信講座を利用して学習する場合も、300～400時間が必要とされています。

メリット

 独学とスクールの良いとこどりで、費用を抑えつつ体系化されたカリキュラムに沿って学習を進められます。通学の必要がないため、時間や場所を選ばず学習でき、忙しい社会人に最適です。

デメリット

スクールのように講師との直接的なやり取りには制限がある場合があります。

 

宅建の試験内容

宅建試験は2時間全50問のマークシート形式で、出題科目は「宅建業法」「権利関係」「法令上の制限」「税・その他」の4つに分かれています。

合格の戦略として、配点の重要度と出題難易度を考慮した学習時間の配分が重要です。

 

科目名	出題数	勉強時間配分の目安
宅建業法	20問	約40%（120〜160時間）
権利関係	14問	約30%（90〜120時間）
法令上の制限	8問	約20%（60〜80時間）
税・その他	8問	約10%（30〜40時間）

 

※学習時間配分について： 

上記の時間は、総学習時間300～400時間を想定した配分です。

宅建業法（20問）

宅建業法は宅地建物取引業を規制する法律であり、不動産取引におけるルールと倫理に関する内容が出題されます。具体的には、宅建業者の免許制度、営業保証金、取引士の制度と義務、そして売買契約に至るまでの重要事項の説明（35条書面）や契約成立後の書面交付（37条書面）などです。

宅建試験の中でも最重要な科目で、配点が大きく、知識を身に付けていれば得点を取りやすいため、高得点を目指しましょう。

 

権利関係（14問）

権利関係では、主に民法が中心となり、不動産取引の基礎となる法律的な考え方が問われます。具体的には、契約、物権（所有権、担保など）、債権、親族・相続といった民法に加え、借地借家法や不動産登記法などが出題されます。

判例から出題されることもあるため、宅建試験の中でも特に難しいと言われています。

法令上の制限（8問）

法令上の制限では、不動産の利用や開発に関して、国や自治体が定める公法上の規制に関する内容が出題されます。具体的には、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法などが含まれます。

馴染みのない専門用語や数値が出ることが多いため、繰り返し学習し、しっかりと知識を身に付けましょう。

税・その他（8問）

税・その他では、不動産に関する税金（不動産取得税、固定資産税など）を扱う税法、不動産の鑑定評価、地価公示法、そして住宅金融支援機構法や統計など、周辺知識が幅広く出題されます。

出題範囲は広いものの、深掘りされた問題が少ないため、比較的点を取りやすい科目です。

宅建の勉強を始めるタイミング

宅建試験は、半年～1年前から勉強を始めるのが理想的です。

下記表でタイミング別の1日の勉強時間の目安をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

 

期間	必要な総時間（目安）	1日あたりの平均時間
1年間（11月スタート）	300時間	約1時間
6ヶ月間（4月スタート）	300時間	約2時間
3ヶ月間（7月スタート）	300時間	約3.5時間

宅建の勉強スケジュール│勉強時間の配分は？

ここからは、宅建の勉強を始めるタイミング別に、具体的なスケジュールと勉強時間の配分、学習のポイントについてご紹介します。

1年前から始める余裕を持った学習スケジュール

 

学習スタイル	1ヶ月あたりの勉強時間（目安）	1日あたりの勉強時間（目安）
独学	約50時間	約2時間
スクール/通信講座	約30時間	約1時間

 

試験日から約1年前に学習をスタートする、最も理想的で余裕のあるスケジュールです。社会人の人でも時間をかけて丁寧に学習を進められます。

独学の場合は1ヶ月約50時間、1日2時間の勉強時間が目安です。スクールに通って勉強する場合は、1ヶ月約30時間、1日1時間程度の勉強時間が目安となります。

最初の半年で、権利関係と宅建業法のテキストをひと通り読み、基礎をしっかりと身に付けていくことがポイントです。

3～4月から始める場合

 

学習スタイル	1ヶ月あたりの勉強時間（目安）	1日あたりの勉強時間（目安）
独学	約85時間	約3時間
スクール/通信講座	約50時間	約2時間

 

多くの受験生がスタートする、標準的なスケジュールです。

独学の場合は1ヶ月約85時間、1日あたり約3時間の勉強時間が目安です。スクールや通信講座を利用する場合は、1ヶ月約50時間、1日あたり約2時間の勉強が必要です。

7月ごろまでに基礎をしっかりと身に付け、なるべく早く過去問演習へ移行することが合格の鍵です。

宅建業法を最優先、並行して権利関係を学び、土台となる知識を築きましょう。

7月から始める場合

 

学習スタイル	1ヶ月あたりの勉強時間（目安）	1日あたりの勉強時間（目安）
独学	約200時間	約7時間
スクール/通信講座	約100時間	約4~5時間

 

宅建試験の3か月前に始める場合は、より高い集中力で挑む必要があります。1日の学習時間の確保が多くなるため、特に独学で挑む人は、かなりタイトなスケジュールを組むことになります。

独学の場合は1ヶ月約200時間、1日7時間の勉強時間が必要なので、働きながら学習したい人は休日に徹底して勉強しましょう。スクールや通信講座を利用する場合は、1ヶ月約100時間、1日あたり4~5時間の勉強時間が目安となります。

宅建業法と法令上の制限など、得点効率の良い科目に学習時間の多くを割り振り、権利関係は重要度の高い論点に絞るなど、取捨選択しながら要点を押さえていくのがコツです。

8～10月、直前期の追い込み対策

 

宅建の本試験直前にあたるこの時期は、これまでの努力を確実に得点に結びつけるための、非常に重要な期間となります。

 

もし十分な基礎固めができていない場合や短期合格を目指す場合は、一定長時間の時間確保が必須となります。具体的には、この追い込み時期は1ヶ月で160～180時間、1日あたり最低でも4～6時間、週末は8時間以上の学習時間を確保しましょう。

 

一方で、1年前などから計画的に進めてきた方は、やみくもに時間数を増やすよりも、苦手分野の克服と模擬試験に時間を集中させることが重要です。

 

いずれのケースでも、この時期は演習問題や過去問を繰り返し解き、出題傾向の把握と知識の定着を図ることが最優先です。特に模擬試験は最低でも3回受験し、本番の時間配分や長時間の集中力といった試験体力を調整するのがおすすめです。また、試験の直前には、その年の法改正点と最新の統計情報を必ず確認し、確実に得点できる準備をしておきましょう。

社会人が働きながら宅建の勉強をするコツ

忙しい社会人が、限られた時間の中で効率的に宅建の勉強を進めるための具体的なコツを紹介します。

 

 1. スキマ時間を徹底的に有効活用する

通勤時間、移動時間、昼休み、寝る前の数分間など、小さなスキマ時間での学習が、やがて大きな成果につながります。

 

具体的な活用法: Web動画の視聴（YouTubeなど）や、一問一答アプリの活用など、外出先でも学習しやすいツールで知識を吸収していきましょう。特に暗記系の科目（法令上の制限、税・その他）に有効です。

 

 2. 満点を目指さず、過去問の出題頻度が高い論点を優先する

宅建試験は合格点を取れば良い試験です。合格ライン突破に焦点を当て、難易度の高い分野や出題頻度の低い分野は思い切って捨てる勇気も必要です。

 

戦略的な学習: 過去問の出題頻度が高い論点（頻出分野）を優先的に学習し、得点源となる宅建業法を最重要視する戦略で効率化を図りましょう。単なる暗記ではなく、事例を交えて意味を理解しながら覚えることで、応用問題への対応力も高まります。

 

 3. 最新の法令に対応した教材を必ず使う

宅建試験は法改正が頻繁に行われる分野から出題されます。特に民法は大規模な改正があったため、古い教材を使うと誤った知識で覚えてしまうリスクがあります。

 

信頼性確保: 必ず最新の法令に対応した教材を選び、予備校や通信講座を利用する場合は、法改正点のフォローアップ体制が整っているかを確認しましょう。

 

 4. 試験日から逆算し、予備日を設けた計画的な学習を行う

「いつまでに基礎を身に付けるか」「いつから過去問を解き始めるか」など、具体的な目標を設定し、試験日から逆算して計画的に勉強することが極めて重要です。

 

急な予定や体調不良に備え、予備日を計画に組み込んでおくことも忘れないようにしましょう。

 

まとめ：宅建合格は計画的な時間の確保が鍵

宅建試験の合格までに必要な時間は、独学で400～600時間、スクール（予備校）や通信講座を利用する場合で300～400時間が目安です。

 

合格を目指す上で重要なポイントは、合格ラインから逆算した学習計画をしっかりと立て、スキマ時間を活用して継続的に知識を定着させることです。試験のチャンスは年に1回のため、余裕を持った無理のないスケジュールで確実に知識を身に付けましょう。